マヂカルラブリーのロン毛のほうに似てる夫

ファミレスで向かいに座っている夫と目があった。

「どうしたの?」と言うと

「俺、今やることたくさんあるけど、妻ちゃんを見つめるっていうのも今日のやることに入っているから。今日の君は今日しかいないから見てるのっ!」

と夫は言う。

そういう恥ずかしいことを平気で言えるのが私のラブリー夫だ。

 

夫は4つ年上の32歳。以前勤めていた出版社で出会った。編集者って変わり者が多いと聞くけれど夫もなかなかの変わり者で、テレビで見る人達にだいたい似ている。

 

最近似ていたのは、去年M-1で優勝したマヂカルラブリーの転げ回っていた人。あと、優勝を逃した見取り図のロン毛のほうにも髪型が似ていた。ちょっと前だと、ピスタチオの伊地知さんに似てた。

 

そんな夫は基本的には誰にでもやさしいのだけど、ただ一人だけ夫があたりを強くする男がいる。まさるくんだ。まさるくんは夫の20代前半の悪友でちょいちょいうちに飲みに来たりする。

昨日の0時、そのまさるくんから「寒くて凍えそうなので一晩泊めてほしい」と連絡があった。永福町で友達と飲んでいたらしいが、突然解散することになってしまい、コロナの自粛営業でどの店もやっていないし、終電も終わっているという八方塞がりの状況らしい。まさるくんを不憫に思ったので、泊めてあげようということになった。

 

私にとってもまさるくんは気のおけない友達だったけど、最低限だけでも家を整えようとささっと洗面所とトイレを私は掃除した。

でも夫は「まさるごときにそんなに気を使わなくていいよ」と言う。

誰にでも優しい夫はまさるくんにだけなぜかあたりが強い。

理由はわからないが、それがとてもおもしろい。

 

深夜1時ごろ、まさるくんがうちに到着した。少し前は酔っ払っていたんだろうけど、寒さのせいで完全に酔いが覚めている。わたしたちに申し訳無さそうな顔をしていたので、正月三賀日の夜に突然来るなんて……とちょっと思っていたけど、そう思わないことにした。

 

そのあと、まさるくんと夫とアニメのドクターストーンを見た。坂道のアポロンがおもしろいよって教えてもらったり、まさるくんも好きだという「このサイテーな世界の終わり」の話をして私はクソナード全開になったりした。それなりに楽しい時間を過ごした。

 

途中、マンガの話をしていて、まさるくんがチェンソーマンを読んでいないと言い出した。

「どんな話のマンガなん?」とまさるくんが夫に聞くと

「ラスボスを主人公が生姜焼きにして食っちゃう話」と

最終回の一番盛り上がったネタバレを夫がさらっと言っていた。

後に、これからまさるくん読むかもしれないのに……マンガにおけるネタバレは罪深いよ……と夫に言うと、「まさるだからいいかなと思って」と夫がニヤリとしていた。

 

そんなかんじで完全にまさるくんだけを馬鹿にしている夫。

寝落ちてしまったまさるくんに布団をかけようとしたら「まさるには一番うすいタオルケットでいい」と言うし、私が朝起きたら「8時ごろにまさるのこと追い出しておいた」と言う。

まさるくんと夫の関係性は不思議だけど、愛は感じられる。だからこれからも見守っていこうと思う。

 

今日は昼頃に起きて、千鳥の相席食堂をいくつか見て、生理痛が痛くなって横になったりして、その後高円寺の書店に行ったりして、またファミレスに来て文章を書いている。今はくるりのハイウェイを馬鹿みたいに聞いている。

 

明日から仕事が始まるけれどやっていないことは結構あるので大変かもしれない。